電子ブレーカーとはメリットとデメリット(動力契約・電気)part1
2021/10/19
電子ブレーカーとは メリット デメリット
画像の右側が電子ブレーカーです
右側が電子ブレーカーです。容量(契約容量)は21A(アンペア)ですが、250AF(アンペアフレーム)か、それ以上あるくらいの大きさです。
通常20Aのブレーカーでこのようなサイズの大きいものはないですね。
電子ブレーカーとは電気契約で低圧動力の主開閉器契約時に使用されるブレーカーです。
結論を言いますと、この「電子ブレーカー」はメリットはあります。
電子ブレーカーを導入すれば、リース料や約10年に1度の電子ブレーカーの交換費用などを含めても、低圧動力の電気代を削減することは可能だと思います。
ただ残念な事に、この電子ブレーカーのことを「詐欺ブレーカー」と呼ぶ人がいることも事実です。
この電子ブレーカーは、とても優れたブレーカーだと思います。
電子ブレーカーの事をよく理解していない人が「詐欺ブレーカー」と呼んでいるように感じます。電子ブレーカーは誰でも施工・取り扱えるものではなく、電子ブレーカーメーカーの代理店など決まった業者さんしか施工・取り扱うことができません。
以前ですが、私自身もある企業の方から電子ブレーカーの工事を担当してもらえないかというお話をいただいた事があるのですが、その時は対応エリアが少し遠かったためお断りしました。
この電子ブレーカーが怪しいブレーカーと勘違いされるのは、お客様のお話を聞いていると、代理店の方の説明不足や対応が原因ではないかなと感じます。
電気の契約には一般的に、「電灯」と「動力」があります。また、電力会社さんや私たち工事店もそのまま「電灯」と「動力」という言い方をしています。
普段生活で使用している電気は「電灯」という電気になります。「動力」は業務用設備・機器や産業用機械などで使われる電気です。
動力の主開閉器契約で使用される電子ブレーカーの説明の前に、
低圧動力の電気契約には、「主開閉器契約」と「負荷設備契約」の2種類があります。電灯には色々な契約プランがあります。
動力の契約でだいたい多いのは、「負荷設備契約」だと思います。「主開閉器契約」は「負荷設備契約」より少なめなのかなという印象です。
この「主開閉器契約」と「負荷設備契約」の2つの違いですが、
主開閉器契約とは、その名の通り「主開閉器」の容量がそのまま契約容量になります。
例えば、「主開閉器(メインブレーカ)」の容量が「40A(アンペア)」だとすると、
√3VI という式から、
√3 × 200V × 40A ≒ 13,856kw
になるので、動力電気契約容量は14kwになります。
こちらの管轄の電力会社では、低圧動力の基本料金は1kw/hあたり約1,000円なので、主開閉器が40Aの場合の基本料金は、約14,000円ということになります。
これが動力電気の主開閉器契約です。
もう1つの負荷設備契約というのは、動力電源の負荷(機器・機械)の出力量を全て合計したものが契約容量になります。
例えば、工場に出力2.2kw(モーター出力)の機械が10台あるとすると、
2.2kw × 10台 = 22kw
になるので、動力電気契約容量は22kwになります。
この場合の基本料金は、1kw/hあたり約1,000円なので、約22,000円ということになります。
2.2kwの機械2台で負荷設備契約の場合は、小数点以下は四捨五入されるはずなので、契約容量は4.4kwが4.0kwとなり、基本料金は約4,000円となります。
負荷設備契約とは メリットとデメリット
主開閉器契約とどちらの契約がお得なのか
一般的に多い契約は、負荷設備契約だと思います。
⚫︎負荷設備契約のメリット
① 同時に複数の機械を使用してもブレーカーが落ちる心配がないので安心して電気を使える
② 機器・機械などが1台や2台の場合は、負荷設備契約でもそんなに基本料金は高くない
⚫︎負荷設備契約のデメリット
① 機械の台数が多ければ多いほど電気の基本料金が高くなる
② 10台中、常時稼働する機械が1台や2台であれば基本料金が無駄になっている可能性がある
(②のような場合には電子ブレーカーを導入し、主開閉器契約にすることで、基本料金を削減する事が可能だと思います)
機械の台数が1台や2台など少ない場合は、負荷設備契約にしても基本料金はそんなに高くならないと思うので、機械や機器の台数が少ない場合は負荷設備契約を選びます。
問題は、機械の台数が多い場合ですね。負荷設備契約の場合、機械の台数が多ければ多いほど契約容量が増えて、基本料金が高くなります。
ここで、負荷設備契約がお得のか主開閉器契約がお得なのかという事になります。
負荷設備契約は、例えば2.2kwの機械が10台あり、10台全ての機械を同時に使用することがあるなら負荷設備契約の方を選びます。
ただ、機械10台のうち、同時に使用するのは2台までという場合は、常時稼働電流が少ないため、負荷設備契約より主開閉器契約の方が料金的に安くなる可能性があります。
負荷設備契約の契約容量の計算の仕方は、先ほども言いましたけど負荷設備(機械・設備)全ての出力の容量を合計する訳ですが、言い方を変えると全ての機械を同時に使用する前提の契約とも言えますよね。
なので、機械が10台あるうち同時に使用するのは2台などであれば無駄な電気料金を支払っているという事にもなります。
常時稼働する機械が2台であれば、その2台を使用できる容量の主開閉器で契約すればいいのでは?となりますよね。
少し計算してみます、上でも同じ事を書きましたが、まず負荷設備契約からですが
出力2.2kwの機械が10台=22kw(基本料金が1kw/1,000円なので、約22,000円)/負荷設備契約
となります。
機械が10台ある内、常時稼働する機械(出力2.2kw)が2台の時の主開閉器契約する場合の、主開閉器の容量は、√3VIcosθという計算式を使い、cosθ(力率)を仮に0.8として
√3 × 200V × I (電流値) × 0.8 = 4.4kw
I (電流値) = 15.9A(出力2.2kwの機械を2台使用した場合の電流値)
になります。
例えばここで、15.9Aより上の容量のブレーカーを主開閉器とすればいいだけであれば、一般的には20Aのサーキットブレーカーになります。その20Aのブレーカーをつけた場合の容量は、√3VIの式を使い、
√3 × 200V × 20A ≒ 7kw
となり、基本料金は約7,000円になるので、
22,000円 - 7,000円 = 15,000円 になり、基本料金の大幅な削減になります。
ですが、これではおそらくダメなんです。
ダメというのは、一般的な20Aのサーキットブレーカーでは機械を使用中にブレーカーが落ちてしまうという事ですね。
動力電源というのは、120度ずつ位相のズレた電気で、モーターを回転させるのに適した電気なのですが、このモーターというのは、始動電流が大きかったり、機械が稼働中に何か材料が引っ掛かった場合など、電流値が急激に大きくなる場合があります。
その急激に電流値が大きくなった時に、通常の20Aの容量の小さいサーキットブレーカーだと落ちてしまいます。例えば、例で挙げた2.2kwの機械でも状況によっては100Aを超えることもあります。
なのでブレーカーの容量を選定する時は、電力ロガーなどを使い、1週間ほどの全体の稼働電流値の記録をとってからブレーカー容量を選定した方が確実ですね。
結局15.9Aを上回っていても20Aのブレーカーは使えないので、さらに容量を上げます。この場合おそらく最低でも50A以上は必要になると思います。
50Aで主開閉器契約をした場合の基本料金は、
√3 × 200V × 50A ≒ 17kw
となり、基本料金は約17,000円になるので、
22,000円 - 17,000円 = 5,000円 の削減ができます。
ただ、50Aの容量は少し不安がありますね。これを60Aにすると基本料金は約21,000円になり、70Aにすると約24,000円になります。
70Aにすると負荷設備契約をした場合の22,000円を超えてしまいます。
というように、主開閉器契約は容量の選定が少し難しいんですね。結局、基本料金を削減するつもりが、負荷設備契約とそんなに変わらなかったという事になりかねないんですね。
本当は稼働電流値の15.9Aを超えた20Aくらいのブレーカーで主開閉器契約ができれば基本料金を大幅に削減できるので一番いい訳です。
そしてそれを実現できるのが、「電子ブレーカー」です。
電子ブレーカーは、この例の場合であれば、20Aは少し小さいかもしれませんが、30Aの電子ブレーカーで主開閉器契約をするなら問題ないように感じます。
実際は、やはり電力ロガーで確認した方が間違いないです。
ただ電子ブレーカーのメーカーはある程度のデータを持っていると思うので、電流値のログをとらなくてもブレーカー容量を決めることができるかもしれないですね。
電子ブレーカーの容量のラインナップは細かい間隔であります。
一般的なサーキットブレーカーの場合は、
10A、15A、20A、30A、40A、50A、60A、75A、100A、125Aという感じですが、
電子ブレーカーの場合は、
4A、7A、10A、12A、15A、18A、21A、24A、27A、30A、33A、36A、38A、41A、44A、47A、50A…..........119A、122A、125Aまでと容量がかなり細かい間隔でありますので、一般的なサーキットブレーカーよりも適したブレーカー容量を選ぶことができます。
part 2へ続きます。