電子ブレーカーとはメリットとデメリット(動力契約・電気)part2
2021/10/20
主開閉器契約とは メリットとデメリット
負荷設備契約とどちらの契約がお得なのか
part1の続きです。
主開閉器契約のメリットとデメリット
⚫︎メリット
① 機器・設備の使用状況によっては低圧動力の基本料金を安くすることが可能
⚫︎デメリット
① 主開閉器容量の選定が難しい(結果的に負荷設備契約の容量と変わらない可能性がある)
② 機械を使用中にブレーカーが落ちる可能性がある
(基本料金を下げるためにできるだけ容量を小さくする必要があるため)
主開閉器契約とは、画像のようにブレーカーの容量を契約容量とする契約方法です。
例えば、画像は21Aの電子ブレーカーで主開閉器契約をしているのですが、この21Aの場合は、
√3VIという式から
√3 × 200V × 21A ≒ 7.3kw
となるので、動力の基本料金は約7,000円という事になります。
工場に動力の機械が10台ある内、同時に使用するのは多くても2台までという場合は、実際の稼働電流値はそんなに大きくならないので、負荷設備契約より、主開閉器契約の方がお得になる可能性が高くなります。
ちなみに、画像の電子ブレーカーが付いている場所は、木工用機械がたくさんある工場です。
この21Aの電子ブレーカーを、一般的な20Aのサーキットブレーカーに交換するとどうなるかというと、機械を使用するとすぐに落ちます。
同じうような容量でも電子ブレーカーなので、なかなか落ちないんですね。
21Aの電子ブレーカーを一般的なサーキットブレーカーに交換するなら、40A以上は必要かもしれません。
電子ブレーカーとサーキットブレーカーの違い
ブレーカーの動作特性の違い
電子ブレーカーというのは、一般的によく使うサーキットブレーカー(配線用遮断器)と同じ働き・役目をしていて、定格容量以上の電気が通過した時に電気が切れる・遮断するものです。
この「定格容量以上」という基準値は、JISにより決められていて、その基準値以内に電気を遮断するようにブレーカーは作られています。
その基準値というのは、ブレーカーカタログの動作特性曲線という図で確認することができます。
画像があるメーカーのブレーカー動作特性曲線になります。
この動作特性曲線が、JISの基準値以内になっています。
この曲線図を見ると、例えば、定格電流の何%に達した場合は、何分以内、何秒以内で遮断するとか、1000%に達した場合は瞬時に遮断するなどを確認する事ができます。
1000%というのは、10倍という事ですね。50Aのブレーカーに500Aの電気が流れたら瞬時に遮断するという感じです。
なので、50Aを超えてすぐブレーカーが落ちることもあれば、50Aを超えてもしばらく落ちない事もあります。50Aをどれだけ超えたかでブレーカーが落ちるタイミングが変わります。
電子ブレーカーと通常のサーキットブレーカーでは、この動作特性の数値がかなり違うんですね。
例えば通常の50Aサーキットブレーカーがあるとすると、このブレーカーは電流値を測定しているのではなく、熱を感知して電気を遮断しています。
一般的なサーキットブレーカーの電気の引き外し方式は、熱動式・電磁式・熱動電磁式とあります。
詳しい説明は割愛しますが、どの方式も電流値を測定している訳ではありません。シンプルな構造で電気を遮断しています。
そして、JISが定める基準よりもかなり早い段階で電気を遮断するように作られています。良く言えば安全ですね。
電子ブレーカーの場合は違っていて、流れる電流値を測定しています。極端に言うとブレーカーの中にパソコンのCPUが搭載されているような精密機器になりますね。
実際の電流値を測定しているので、JISが定める基準値ギリギリまで電気を流すことができます。
それで、part1で書いた内容の中の、20Aのサーキットブレーカーでは落ちてしまうけど、21Aの電子ブレーカーでは落ちないという事になる訳ですね。
ここからは私の想像ですが、先ほども書いたように、電子ブレーカーは精密機器なのでリースという形をとっているんだと思います。
そして、精密機器なので約10年に1度、電子ブレーカーの交換が必要という事だと思います。
ただ、ブレーカーをリースするとか、約10年に1度交換が必要などと言われると怪しむ人も出てくると思います。ブレーカーをリースするとか一般的ではないですからね。
ここの説明をもう少し丁寧にお客様にしてあげれば、怒る方もそんなにいないと思いますし、詐欺ブレーカーという人も出てこないと思います。
あと、電子ブレーカーは容量によってリース料が違ってくると思います。
交換費用も、ブレーカー容量で本体の金額に違いが出てきますし、施工費も工事業者さんによって違うと思います。
電子ブレーカーの動作特性
動作特性の違い
こちらの画像があるメーカーの電子ブレーカーの動作特性です。
一般的なサーキットブレーカーの動作特性との違いを少し説明すると、
例えば画像の電子ブレーカの動作特性であるピンク色の蛍光ペンでマークしてある部分を見ると、「〜400%=1分50秒」となっています。
これは、定格電流の4倍の電流が流れた場合は、1分50秒以内で電気を遮断するという事になります。
これに対し、一般的なサーキットブレーカーの数値はというと下の画像に同じくピンク色の蛍光ペンでマークしてある、横軸の400が400%という意味になります。
縦軸が時間(秒)になります。
一般的なサーキットブレーカーの場合、定格電流の400%に達した場合、5秒〜20秒で電気を遮断するという曲線図になっています。
電子ブレーカは1分50秒もつのに対して、一般的なサーキットブレーカーは5秒〜20秒しかもたないんです。これだけの違いがあるんですね。
どちらもJISが定める動作特性の基準値以内になっていますが、電子ブレーカは基準値ギリギリまでの電気を使用できるブレーカになっているんです。
それは、ブレーカ内部で電流値を測定しているから基準値ギリギリまで使用できるんですね。
それで主開閉器契約でブレーカ容量を低くすることが可能という事になります。
通常のサーキットブレーカの動作特性
ブレーカの動作特性の違い
画像の下の横軸の400に蛍光ペンでマーキングしてあります。これは400%とという意味で、定格電流の4倍の電気が流れた時という意味です。
その400%に対応した縦軸ですが、これは時間(秒)です。
約5秒〜20秒になっていますね。
通常のサーキットブレーカーは、定格電流の4倍の電気が流れた場合は、約5秒〜20秒で電気を遮断します。
以上が、電子ブレーカと一般的なサーキットブレーカーの大きな違いです。
電子ブレーカは落ちにくい(切れにくい)ですが、通常のサーキットブレーカは落ちやすいです。(切れやすい)
私は特に電子ブレーカをおすすめしている訳ではないのですが、電子ブレーカを誤解されている方を見てきたので、今回簡単に説明してみようと思いました。
電子ブレーカは詐欺ブレーカではないですし、低圧動力の基本料金の削減もできます。
ただ、一般的なブレーカと違うのは、電子ブレーカは精密機器のため
① リース料金がかかる(管理費みたいなものでしょうか)
② 数年に一度新しい電子ブレーカに交換(有料)する必要がある(故障する前に要交換)
という事ですね。
通常のサーキットブレーカも壊れることはありますが、何十年経過しても壊れる可能性はとても低いです。
漏電ブレーカは20年、30年と使用すると故障することはありますね。その場合は、漏電ブレーカの交換になります。
漏電ブレーカが故障すると、漏電していないのに頻繁に落ちる(切れる)ようになります。
また電子ブレーカメーカの違いや取扱代理店や工事店により上記の料金は変わってくるのかもしれません。
もし、電子ブレーカの導入を検討されているようでしたら、いくつかのメーカで見積もりをしてもらった方が良いかもしれないですね。
次回のブログは実際に電子ブレーカを契約している人の相談を受けた時の状況を紹介したいと思います。